カナダの医学誌「
カナダ・メディカル・アソシエーション・ジャーナル」で発表された研究報告は、8000人のデータを分析しました。
その研究報告の主筆者を務めたカナダ・アルバータ大学のアーヤ・シャルマ博士によれば、最大の疑問は、BMIだけで寿命の短い人を見分けられるかどうかだったとのこと。
BMIは身長と体重の関係によって算出されるものの、体脂肪は計算に入れません。BMIが25~29の人は、「太りすぎ」とみなされ、30以上が「肥満」となります。この測定方法は、1980年代から肥満の指標として利用されてきました。
シャルマ博士は、太りすぎとされた人に対して、自身が考案した「エドモントン肥満病期段階システム」に基づきランク分けを行いました。
ランクは、ステージ0からステージ4までの5段階。ステージ0は、その人物が肥満であっても、明白な医学的リスクがないことを意味します。
ステージ1は、境界域高血圧もしくは高血圧の人で、血糖値が高く、痛みなどの軽度の症状が現れている可能性があります。
ステージ2は、糖尿病や睡眠時の無呼吸といった肥満に関連した疾患で分類されます。
ステージ3は、心不全や関節炎のように肉体的にダメージがある人。
ステージ4は、末期の習慣病を患い、深刻な障害などを抱える人です。
このランク分けは、20年後の死のリスクを計る上で、BMIよりも正確とのこと。シャルマ博士は「この研究から分かるのは、BMIに基づいた予測は不可能ということです。ほかのリスク要因にも目を向ける必要がある」と指摘。「もちろん、BMIの数値が高い人は健康上の問題を抱えやすい。しかし、そのうちの20%は問題なくやっていけるだろう」と付け加えました。
別の医学誌に発表された調査報告でも、同様の結果が得られたとのこと。高いBMIと死亡リスクの上昇には関連性が認められるものの、詳細な健康リスクに関してはかなりの幅がみられるそうです。
この研究は2万9533人分の個人情報を基に16年後の死亡率について調査を行いました。それによれば、エドモントン肥満病期段階システムのステージ0もしくはステージ1の人と、通常の体重の人との間では、死亡リスクに差がないとのこと。
なぜ、一部の人々が「健康な肥満」であるとみなされる一方で、それよりも太っていないのに肥満に関連した合併症を抱える人もいるのでしょうか。
一つには、遺伝子の影響が考えられます。両親や祖父母に糖尿病や関節炎などの症状がある場合、その人は、体重が増えることで、そういった病気にかかる可能性はより高くなります。
別の要素は、食事の質や運動です。たとえ肥満と判定される人でも、食事や運動によってリスクを抑制できます。
しかし、これ以外の要素については、依然として不明瞭なままなんです。
シャルマ博士は、体重を重要視するよりも、肥満患者の高血圧をはじめとする慢性疾患のリスクを確認することを勧めます。
シャルマ博士は「つまりは、私があなたから誰かの身長や体重を聞いたとしても、その人がどのくらい健康なのかは言えないということです。
ほかの健康問題についてさらなるテストを行う必要があります」と強調しました。